経営 × エンジニア × 新規事業開発のベテランが語る。「モノづくりが好きな人」を求める理由とは

インタビュー

ラジオ局エフエム東京のグループ会社として「ともだちはくま」や「突撃!ラッコさん」など、人気キャラクターライセンスを取り扱うジグノシステムジャパン株式会社(以下、ジグノシステムジャパン)。実は同社は、これら一般向け事業のほかに、大手企業のシステム開発受託や、エフエム東京の放送内容をもとにしたコンテンツ制作など、法人向け開発事業も行なっています。

そんな BtoB 事業の「新規事業開発」メンバーを募集しているのが、今回お話を伺った石井伸明氏。なんと、ジグノシステムジャパンで 9 社目というキャリアで、90 年代のインターネット黎明期よりシステムエンジニアリングを続ける現役の技術者であり、経営メンバーとして数々の新規事業開発も進める人物です。 そんな石井さんが求めるメンバー像は、「モノづくりが好きな人」。非常にシンプルなメッセージです。

そこにかけた想いや期待は何なのか。今回は、石井氏のこれまでのキャリアをじっくりと伺いながら、ジグノシステムジャパンで働くことの魅力や、会社としての将来的な展望等について伺いました。

プロフィール

石井 信明(いしい のぶあき)

ジグノシステムジャパン株式会社

執行役員 ソリューション事業本部副本部長

銀行員としてのキャリアからスタートし、現在9社目。起業経験もありエンジニアリングのみならず、経営、事業企画などさまざまな仕事を経験した後、ジグノシステムジャパンへ入社。現在は執行役員としてtoB向け事業と新規事業企画に従事。

BtoC と BtoB、2 軸で事業展開するジグノシステムジャパン

石井様写真

――まずはジグノシステムジャパンがどういう会社なのか。その歴史や事業内容について教えてください。

石井

弊社は、元々は 90 年代のインターネット黎明期から、モバイル向けコンテンツを制作・提供していた会社です。2002 年のヘラクレス(現在の JASDAQ)上場後、2 年後の 2004 年にはエフエム東京と業務資本提携し、2008 年からは完全⼦会社となって現在に至ります。 今はラジオ局グループの一員として、キャラクターの LINE スタンプやグッズ販売、SNS プラットフォームの海外展開を手がける一般消費者向け(以下、toC 向け)と、Web サイト構築や Web サービス構築、アプリ企画開発等を手がける法人向け(以下、toB 向け)の 2 軸で事業を展開しています。

グッズ写真

――様々な事業を展開されているのですね。石井さんは、その中でどんなお仕事をされているのでしょうか?

石井

執行役員として、ソリューション事業本部という toB 向け事業部門の副本部長として、ソリューションビジネス部と新規事業企画部を統括しています。 現在の弊社の事業構成を見ると toC 向け事業が屋台骨を支えている状態で、toB 向け事業も悪くはないですが、成功度合いから言ったら全然違います。今後はこの 2 軸をより相互補完できる関係にしていく必要があり、それを「技術オリエンテッド」の形で推し進めていくのが僕の業務ミッションになります。

――もともと石井さんは、このような “事業のグロースアップ” を生業とされてきたのでしょうか?

石井

グロースアップに限らず、本当に色々とやってきましたよ(笑) 新規事業企画もやれば、エンジニアもやる。会社も経営したし、そもそも最初は銀行員でしたからね。起業も含めて今の会社で 9 社目になります。

銀行マンから、社会人4年目で家業を継ぐことに

石井様写真

――数々の会社をご経験されてきた石井さんのキャリアについて伺いたいのですが、そもそもどういうきっかけで銀行に入社されることになったのでしょうか?

石井

最初は為替ディーラーになりたかったんですよ。 子どもの頃から実家は自営業で、最初は製鉄会社のサラリーマン、その後は出版会社を営んでいました。 本のビジネスってご存知ですか?印刷・製本してお店に置いたら終わりじゃなくて、実際に売れないと一定期間を経て返品されるんですよ。これって出版会社からしたら、常に在庫リスクを抱えることになるわけです。 そんな在庫リスクから最も遠い為替の世界に入ろうとしたのがきっかけです。だから実は、いわゆる「銀行マン」になりたかった、というわけではありません。

――なるほど。そこからどのようにキャリアが変わっていかれたのですか?

石井

銀行に入行して 4 年後に父が倒れまして、そのタイミングで嫌だった実家の出版社に常務として転職することになります。この時はやりたいことを持って転職したというよりかは、仕方がなかったというのが正直なところでした。 でも、そこで「会社の資産って何だ?」という大きな気づきを得ることができました。 出版社として、ただ紙の本のビジネスだけをやっていたら立ち行かないことは分かっていた中で、会社として持っている価値が何なのかを必死で考え、そこで出た答えが「IP」、すなわち著作物などの知的財産でした。

――どういうことでしょうか?

石井

当時会社には、出版社として膨大な著作物があったにもかかわらず、それを二次活用するという発想も手段も、チャネルもありませんでした。 一方で、世の中では Windows95 といったパソコンが普及し始めています。マルチメディアという言葉も出てきた中で、コンテンツとシステムを繋ごうとする人がまだいないように思いました。 ここだ!と思って、社会人 7 年目で最初の起業をしました。

隠れた資産のニーズを掘り起こして、新しい形に作り変える

――最初の創業企業では、具体的にどんなことをされていたのでしょうか?

石井

今お伝えした通り、世の中にパソコンが出てきて、CD-ROM の中に自分たちの著作物といったエンタテインメントを置き換えることができる時代が到来していました。一方で、システムとコンテンツの両方に知見がある人は当時はまだあまりいなかったので、そこをプロデュースする仕事を請け負っていきました。 これが、僕がシステムに入っていったきっかけでしたね。

――会社立ち上げの時点で、システムにも知見があったということですが、これ以前にどういう機会でシステムに触れられていたのでしょうか?

石井

父が製鉄会社のサラリーマンだった頃オンラインシステムを作る電算部にいて、家に大きなコンピューターが置いてあって、子どもの頃から割と身近な存在としてあったんですよ。今みたいなパーソナルコンピューターじゃなくて、もっと大きいやつです。ガチャンって音がして、ギギギってプログラムをロードして、ロードが終わると緑色の文字がだーっと流れるような、おばけパソコンみたいなやつです。 当時こそは、自分はこの分野はやらないだろうなと思っていたんですが、結果としてがっつりと入っていくことになりました。 あと当時は、それこそ生きるために色々とやっていたので、メディアプロデュース事業のほかにも、イベント制作やディレクション、それに付随したメディアリレーションなども経験しています。

――当時は、マルチメディアイベントが多くありましたね。

石井

そこから、先ほども申し上げた「アナログとデジタル、コンテンツとシステム」を繋げる部分のニーズがさらに高まっていき、大手企業での音楽配信事業の新規開発や、デリバリー事業のデジタル化などを進めることになりました。 要は「最新技術を使ってお金に変える」という、まさに新規事業の開発を担っていたわけです。

――お話を伺うと、常に新規事業開発の現場にいらっしゃった印象です。思い切って伺いますが、新規事業ってどうやって作るのでしょうか?

石井

それをストレートに聞かれたことは、一度もないですね(笑) 経験とともに考え方が常に変わっていきましたが、最初のきっかけは先ほどもお伝えした通り、出版社で隠れた資産のニーズを掘り起こして新しい形に作り変えるというものでした。 じゃあそのニーズって何かと言うと、エンドユーザーのニーズというよりかは、メーカー側のニーズでした。ここだと、お金も多く出るわけですよ。 これが大きな経験でしたね。

ビジネスの見方が完全に変わった「勝利の方程式」経験

タイトル

――新しい事業を創出するには、少なくとも数字的な経営目線も必要になると思います。石井さんは社会人 4 年目から早々に、出版社の経営陣として参画されているわけですが、経営目線という観点で大きなターニングポイントになったきっかけは、何かあるのでしょうか?

石井

最初の会社の創業から 12 年後、様々な会社の新規事業担当や COO、経営企画室長などを経て、2 社目を立ち上げました。 外資大手と写真関連ビジネスをご一緒することになって、日本ブランチの立ち上げ支援会社として設立したのですが、そこの業務を通じて「勝利の方程式」という大きな気づきを得ました。 つまり、LTV(ライフタイムバリュー)の考え方を用いて、いくらまでだったら無料で顧客に提供して良いというマーケティング予算が、当時すでにグローバルで明確に決まっていました。ビジネスを体系的に係数化していたんですよ。 システムをガチガチに組んでいた人間からしたら、ビジネスというものを係数化して勝利の方程式を組み、かつそれを実践しているということが、そもそもすごいなと感じましたし、ビジネスそのものへの見方を変えましたね。

――これからの時代は、ますます計数管理的な経営目線を持てる人が必要だと。

石井

それは大前提になるでしょう。 かつて国内 NO.1 の自動車会社ともお仕事をご一緒したことがあって、その時にカンバン方式に触れたんですよ。例えば、企画書を書くときにストップウォッチで時間計測して、標準時間を弾き出して工程管理する。これを Web サイト制作など、あらゆる部分に導入しているわけです。 勝利の方程式は、それに触れたとき以来の衝撃でしたね。 これを前提に、エンジニアって、おそらくクリエイティブが残っている唯一の職業なんじゃないかなと思っています。

プログラムは哲学だ

――今クリエイティブのお話が出てきたので、石井さんのエンジニアリング経験についても伺わせてください。先ほど、最初に仕事としてシステムに着手されたのが「CD-ROM」のコンテンツ開発だったと伺いましたが、そこからプログラミングなどのソフトウェア技術にはどう入っていかれたのでしょうか?

石井

これは 1 社目の操業時代のことなのですが、とある学習塾大手と一緒に、カナダの大学からコンピューターグラフィックスとコンピューターサイエンスのカリキュラムを輸入して、専門学校を作ろうというプロジェクトがありました。 その際にコンピューターサイエンスの先生とがっつりとお話をする機会があったのですが、その時に「そもそもプログラムって、一体なんなんですか?」って聞いたことがあったんです。

――気になりますね。

石井

そしたら、その先生は「プログラムは哲学だ」って言うんです。 要するに、ゼロという概念がなければコンピューターは生まれないから、コンピューターの根っこは数学であり、数学の起源は哲学にあるわけだから、コンピューターを構成するプログラムもまた哲学だ、という理論です。 当時の僕にとっては、今まで触れたことがない面白い考えだなって思ったんです。コンピュータサイエンスという学問がある欧米のベースにある考え方に驚かされました。数学ができるということは、哲学を理解できるということ。日本とは基礎技術が違うなと思いました。

――面白いですね。当時、コンピューターグラフィックスとコンピューターサイエンスを同時に学べる環境自体、まだほとんどなかったんじゃないでしょうか?

石井

なかったと思います。 コンピューターグラフィックスについても、プログラム開発元である大学の教授が訪日した時に、そのチームとランチをご一緒する機会があったんです。その時に、「どんな映画が好きですか?」なんて聞いちゃったわけです。そしたらみんなが口を揃えて言うのが、黒澤明だったんですよ。いらないものを削ぎ落とす形式美が素晴らしいと。それがメンバー全員の基礎的な教養としてあって、それを前提に、まずはデッサンから授業をスタートしていたんですよね。 ちょっと話が脱線しちゃいましたが、要するに、当時プログラミングを生業とする人たちはすごいところから始めるんだなと。 これが僕の、プログラムを書くということの原点ですね。

純粋に、面白いメンバーが多いなと思った

石井様写真

――ここまでは、石井さんのこれまでのキャリアについて伺ってきましたが、なぜ、現在のジグノシステムジャパンに入社されたのでしょうか?

石井

実は、2 社目時代の最後の 2 年は業務委託でジグノシステムジャパンに PM としていたんですよ。PM としての仕事が終わったので、契約解除を願い出たら、現社長(当時専務)から「うちに来て一緒にやらない?」とお誘いを受けたんです。僕を雇いたいという会社が世の中にあるとは思ってなかったんで、面白いこと言うなーと思って、サラリーマンという不自由極まりない環境でやってみるかみたいな感じで受けたんです。会社は違うビジネスモデルを作っていく異質な人材が必要ってことだったのかもですね。

――まさに、システム x 経営 x 新規事業開発という三位一体の経験をなされた石井さんの出番ということですね。でもなぜ、そのままジグノシステムジャパンに入社されたのですか?

石井

当時から尖ったメンバーがチームにいて、Windows2000 のカーネルを開発した者がいたんです。 細かいところは忘れてしまったのですが、普段は技術一辺倒な彼が、僕がやめようとしたら引き止めてきました。もう少しいようよ、って。 彼がそう言うんだったらもうちょっといようかなと思い、最初は業務委託を継続して、その後入社した形になりました。彼がいたから、今の僕があるのかもしれません。 純粋に、面白いメンバーが多いなと思ったのは間違いないですね。

――Windows2000 のカーネル開発って、だいぶコアですね。石井さんの新規事業チームメンバーはどんな方が多いのでしょうか?

石井

一言でくくれないですが、今言ったみたいにすっごく尖ったメンバーだけを拾い上げています。

――何名くらいのチームなのでしょうか?

石井

組織図としてチーム化されているわけではなく、ある種、特命的にプロジェクトごとにチームを組成してやっています。各プロジェクトチームは、せいぜい数名単位ですね。

来てほしいのは、モノづくりの喜びを知っている人

オフィス写真

――少数精鋭で新規プロジェクトを進めるにあたって、具体的にどんな人にジョインしてもらいたいでしょうか?価値観やスキルなど、具体的なものがあれば教えてください。

石井

価値観やスキルっていうとどうしても短絡的になってしまうんですが、あえて申し上げると「同じスピード感」であってほしいと思っています。このウィズコロナ時代、スピード感が一緒じゃないと時代の変化についていけませんから。 あとは「酔っ払いの名医」かなと。丁寧なヤブ医者はいらないんです。酔っ払っててもいいから、メスを持ったらきちんと執刀できる人が欲しいんです。もちろん、一番は丁寧な名医なんでしょうけど、お行儀が良いだけでは利益は出せません。 技術というものが「人間のためにある」ということをちゃんと理解して、スピード感をもって、応用力ある仕事ができる人。 これが大事だなと思っています。

――まずスピード感について確認したいのですが、これは仕事のアウトプットが早いということでしょうか?

石井

システムの人間からすると「反応速度」ですね。何か言われた時に、結果を出すまでの時間が早い遅いがあるんですよ。これが合っていないと、色々とうまくいかないんじゃないかなと思います。 色んな人たちと喋って一緒に働いてみて思うのが、反応してほしいタイミングが大事だということです。ここがスムーズだとお互い気持ちよく仕事ができるし、そこが詰まるとイライラしてしまう。お互いに気持ちが良いと、結果として良いものが生まれてくるんだと思いますよ。 そういう意味では、弊社自体もまだ「遅い」と思います。スピード感をもつ文化がない。だからこそ、新しくジョインする方にはスピード感ある人に来てほしいと思っています。

――共に文化を作っていくということですね。もう 1 つ、技術が「人間のためにある」ことを理解しているとは、具体的にどういうことでしょうか?

石井

簡単な例として、コード 1 つ見てみても、後の人のことを考えないで書かれているか、デバッグしたら丁寧にディスプレイやログが出されるように書かれているかで全然違うわけですよ。ここって、完全にセンスです。 先ほども触れた国内 NO.1 の自動車会社のカンバン方式に「後工程はお客様」という考え方があって、すごくいいですよね。プログラムでエラーが出るのは当たり前で、そこからいかにサービス精神をもって配慮できるか。これも大切なポイントです。面談をしていると、如実に現れてきますよ。

――お話を伺っていると、何かを作るのが好きな人が純粋に向いているんじゃないかなと思います。

石井

まさに、モノづくりがとても好きな人は、すごく良い環境だと思います。僕自身、社内限定のプログラミング教室をやろうかなと思っていますし。 モノを作ることの喜びって、モノづくりが好きな人じゃないとわからないじゃないですか。その喜びを伝えて共有できる場にしたいと思っています。

――まさに、モノづくりの DNA ですね。

石井

僕も含めて、今いるメンバーはサービス精神が旺盛でプログラマーとして尖っているけれど、あくまでみんな外人部隊だからレガシーが残らないんです。ソリューション事業部は今、業務委託含めて 20 名くらいいるのですが、今後はそこにある DNA を自然とつないでいける人も揃えていきたいと思っています。 もちろん、求人票に書いたようなスキル、例えばクラウドサービスでのサーバーレスの開発経験だったり、Node.js / Vue.js / Nuxt.js の開発経験などは、最低限求めます。でも、一番はモノづくりへの喜びを知っている人であることに間違いはありませんね。

全ての技術者は、とにかく「自由」であってほしい

――最後に、読者の皆さまに向けてメッセージをお願いします。

石井

この夏、弊社は新しい企業理念を策定しました。「コミュニケーションをデザインする。人と人とがより強くつながるために。」というものです。 メディアのシステム子会社にしては、随分と大きな風呂敷を広げたと思っていますが、このコミュニケーションのデザインこそが、すごいビジネスを組み立てる上でのキーワードになると思っています。 それを実現する上で、プログラマーに限らず全ての技術者は、とにかく「自由」であってほしいと思っています。正しい自由を手に入れられるのは、この職業だけなんじゃないかなとさえ思っています。なぜなら、人の生活をダイレクトに変えられるポテンシャルを持っているからです。 本当の自由を知る環境として、僕らのチームは最高の場になると思いますよ。

編集後記

かつて2000年代中頃に「放送と通信の融合」という言葉がもてはやされ、大手マスメディアがもつコンテンツアーカイブとコンテンツ制作力への期待値が高まりました。でも現状に目を向けると、例えば映像コンテンツについてはNetflixやディズニーなど海外勢の後塵を拝する状況であると言え、ここ10年は一種のイノベーションのジレンマに苦しめられた時期だったと言えるでしょう。
しかし昨今のコロナ禍を経て、時代は新たなアジェンダを迎えており、「故きを温ね、新しきを知る」ことへの価値が再興して、オールドメディアのDXが加速している状況です。
今回お話を伺ったジグノシステムジャパンも、エフエム東京グループとしてのシナジー強化へと本格的に舵を切るフェーズ。だからこそ、石井さん率いる新規事業開発チームが大きな役割を果たすこととなります。
興奮するフィールドを得たい「モノづくり」フリークの方には、最高の環境となることでしょう。

取材/文:長岡 武司 撮影:太田 善章

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